震災から11年。あの日のことは忘れられません。
お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表し、被災されたすべての皆様にお見舞い申し上げます。教室から、黙祷を捧げました。
当時、高校の音楽教諭だった私は、いわきの高校で被災しました。
その後、教員の異動時期がずれ、８月に当初の内示通り・・相馬の高校へと異動しました。住宅はすべて借り上げられ、教員住宅も原発事故の避難圏内。後から異動した私は住まいも見つからず、宮城県から毎日、海沿いを相馬まで通っていました。もともとあった建物が消えて、太陽がガンガン横から当たってくる・・・そしてまだがれきの山がたくさん・・・それを横目に、気持ちがおかしくなりそうでした。
ニュースにもあったように、原発の近くの高校が、校舎を間借りしていました。原発事故により避難を余儀なくされた生徒さん（先生）も、津波の被害にあった生徒さんも、皆混ざっていました。生徒さんもそのご家族も、先生方も様々な状況の中、通っていました。
生徒さんは皆、学校では前向きで、明るく、惜しみなく、私にパワーをくれました。ですが、本来なら、希望の学校に入学し、新たな気持ちで覚える、歌う、校歌…私も新入生に精一杯指導する…その校歌の中にある歌詞が、生徒さんに震災を思い出させてしてしまう… 下を向く…その時そこにいた訳ではない私には、想像もつかないほどの状況。積極的に校歌の指導はできませんでした。なりたい教員になれ、あの時ほど、辛い時はなかったです。
会津、いわき、相馬、宮城、それぞれ被害の状況も、心情も異なっていました。その土地の方々、生徒さんの気持ちに寄り添おうと思っても、それぞれの場所でそれぞれに、私が想像する以上のものがありました。やるせない気持ちになっている中で、私にできることは何だろう、音楽にできることは何だろう、という思いで一生懸命でした。
沖縄におられる大学の先輩も同じ思いだったと思います。
私の教室のホームページにもあります「ふくしま音楽届け隊」をあらためて紹介させていただきます。
福島県出身で、私の桐朋学園の先輩でもあります、沖縄在住のソプラノ歌手・阿部民子さんが、3.11震災後に立ち上げたプロジェクトによる福島の音楽団体です。阿部民子さんら、沖縄の音楽家による演奏会の収益金の半分が、福島の福祉施設での演奏会支援金として届け隊に寄付されます。また、福島での慰問演奏の写真は、次の沖縄での演奏会会場へ展示されます。
このコンサートは、沖縄と福島が音楽を通してつながり、福島の現状を忘れないために行われる。また、沖縄と福島の人々が音楽を通して、ひと時の楽しみを分かちあう。（沖縄でのコンサートの目的より）
沖縄の方が音楽を楽しむように、福島の方々にも音楽を届けたい、そんな想いを受け止めて、ふくしま音楽届け隊は、福島の施設での慰問演奏を行っております。
今はコロナで演奏会もできなくなってしまいましたが、私も教員退職後より、積極的に活動させていただいております。一方的な偽善にならないよう・・こちらから「慰問します」ではなく、依頼があったところへ行く形でこれまで活動を行ってきました。
今回、メンバーの朱美さん（福島市）がゲストで、Facebookのライブ配信がございます。
よろしければご覧ください。私はFacebookをやっていないのですが・・家族に見せてもらおうと思います。
あいさつ文を引用させていただきます。
こんにちは、ふくしま音楽届け隊です。
早いもので、東日本大震災から今日で11年です。
被災し福島市に避難されている方々は今の生活に慣れ、当時義務教育を受けていた子どもたちは社会人として立派に自立したかのように見えていますが…。
これは、ここ数年の感染症の流行により、昨年、ワクチン接種を受けるための同行支援のため、数時間かけて、接種会場である被災地へ赴いた際の話です。
私（佐藤）が支援を開始した方々は、福島市での生活の年数がすでに被災地での生活よりも長くなった方々もいます。でも、やっぱり幼少期を過ごした被災地が故郷で、10年離れていても、あの神社はおばあちゃんと行ったの、ここのお店は駄菓子屋さんだったの、あの電車で学校に通ってたの…と、楽しい思い出が、昨日のことのように語れる場所なんだという現実に触れ、避難された方々はまだたくさん我慢しているんだなぁとショックを受けました。
ただ救われたのは、移動中の話の中に『コロナが流行る前に、朱美さんたちのコンサートで聴いた曲、南相馬にいた時の学校の芸術鑑賞でも聴いたことがある曲だったの。あの時も南相馬の友達のこと思い出したけど、今日は、みんなワクチン来てるかな？？会えたらいいなぁ…、もう（コンサート）やらないの？？南相馬でもやってほしい…』との内容が含まれており、それは、沖縄の皆さまからのご支援で成り立っている"ふくしま音楽届け隊"のコンサートが、ちゃんと福島の元気の一つになっていたんだということがわかるものでした。
ここ数年は音楽家にとって、とても厳しい年となっておりますが、いつの日かきっと、元気をいただいている沖縄の皆さまのお顔が見えるコンサートを一緒に開催し、感動を共有できれば幸いと、その日を目標に日々音楽活動に励んでおります。
ふくしま音楽届け隊事務局一同、心折れずに被災を乗り越え、笑顔で日々送れますことを、沖縄の皆さまに感謝し、この場をお借りし、御礼申し上げます。
菅野、窪田、佐藤
私にできることを、これからも。